小山内 裕

感謝を最初に言う文化

先日、サーズに立ち向かうWHOの医師たちの再現ドラマをテレビでやっていて、それを見ていて懐かしくなり、またいつかその環境に戻ろうと「少しだけ」心に決めました。

といっても私がWHOで働いていたわけではありません。
そのテレビでは国境を越えて医師たちがメールでコミュニケーションを取っている姿が映し出されていたのですが、どきどき映されるメールの冒頭には必ず感謝の言葉が書いてあるんですね。

私もつい数ヶ月前まで、まさにグローバルな環境で働いておりまして、人種も国境も越えてコミュニケーションをとりながらやってました。
アメリカ人、イギリス人、フランス人、マレーシア人、中国人がメインでしたが、会ったときだけではなく、電話でもメールでも、必ず最初は感謝の言葉から始まるんですよね。

正直に言うと、これは仕事をうまく進めるためのスパイスであることを意識してやっていました。
考え方、環境、経験(一言で乱暴に言ってしまえば「文化」)が違いますから、理解を得るにはいつも相当苦労します。十分に論理的でデータの裏づけもないとすんなりとは進みません。
でも、「心」の部分は別でした。感謝の言葉、相手を讃える言葉ひとつで、比較的早く同じレベルに持ち上げることができました。
お互いそうだったと思います。中長期的に自分の仕事に貢献してもらうためには普段からの感謝の言葉は必須といえました。

I appreciate your efforts.
Thank you for your contribution.
I’m really happy, you did…
The action you toook improved …

いろいろありますね。こういったメッセージは本当に大切ですね。
メッセージを送ることでこちらも心地よいですし、それで逆にメッセージを受け取ることでまた嬉しい。

最後に、私が注意していたことの1つに、明確に、何に感謝しているのか言うことでした。
ただ単に「いつもありがとう」ではなく、「~をしてくれて、こういう結果がでたね。ありがとう」ということでした。

日本語でも十分にできることですから、心新たに気をつけたいと思います。

たばこ、パチンコ、せっかち度

毎日楽しみにしているコラムがある。
日経新聞の「やさしい経済学」。前回は「やさしい経営学」だったかな。

今日は、京都大学教授 依田高典『人間の健康と経済心理「6.嗜癖の連鎖」』を紹介します。

最初に誤解のないように、嗜癖が悪いわけではない、気をつけなければならないのは依存症がある点。「特定の刺激を求める行動を繰り返しすぎた結果、身体的・精神的にその行動の追及から逃れられなくなってしまう」ということでしょう。

a) たばこを好む人、パチンコや競馬を好む人、毎日酒を飲む人
—> せっかちで、リスクに対する慎重度が低い

b) 毎日ではなくとも、酒を飲む人
—> 飲まない人よりも、リスクに対する慎重度が高い

タイトルにもある「嗜癖」とは、アルコールやたばこ、薬物のような物質への依存。
つまり、a)は嗜癖のある人の経済心理を表したもの。
さらに、嗜癖は連鎖する(嗜癖の連鎖。クロスアディクション)。
・ パチンコをする人の喫煙率は78%
・ 競馬をする人の飲酒率は86%
・ 競馬をする人のパチンコ愛好率は48%
いずれも平均と比較するとずば抜けて高い。

相関を見ると、高いのは、パチンコと競馬、喫煙と飲酒。
パチンコ愛好率が1%上昇すると、競馬愛好率も0.8%上昇。
飲酒率が1%上昇すると、喫煙率は0.3%上昇する

ただし、喫煙と競馬、飲酒とパチンコには有意な相関は見られなかったという。

中には、ここで改めて数字で表さなくてもそんなことは当たり前じゃないかと思う方もいるかもしれない。
それは経験的なところで多くの人が知るところだからであろう。
wikipediaで「嗜癖」を調べてみると、物質嗜癖、過程嗜癖、関係嗜癖とある。
コラムでは「物質への依存」とあるので「物質嗜癖」に限ったものであろうか。

ポイントは、「嗜癖の連鎖」である。たばこ、ギャンブル、薬物、酒、ネット、ケータイ、暴力、恋人・・・。これらは嗜癖に。

自社の不都合が売上を伸ばせるか

これはある自動車教習所の中吊り広告です。
見てどのように思うでしょうか。
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[ベーシックプラン]
お客様自身で予約を取る基本プラン
274,665円
(技能教習・技能検定・効果測定料金は別途)
技能教習 4,725
技能検定 7,350
効果測定 仮免 2,100 / 最終 4,200
キャンセル料 1,575円
————————————–
[VIPプラン]
お客様の都合に合わせたスケジュール予約
&追加料金(技能教習・技能検定・効果測定)ナシのプラン
311,415円
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私は始めよく理解できませんでした。

「教習所の予約って、
その時の自分のスケジュールと教習所の空きスケジュールを見比べて、
結局自分の都合で取ることになるんじゃないの?」

と思いました。と同時に

「教習所って、
だいたい混んでいて、
早く免許を取りたいのにも関わらず、
なかなか予約を取るのも大変で、
顧客泣かせだよなぁ」

そして、

「ん?これって教習所の不便さを利用したアップセルなんじゃないの?」

と思いました。
つまり、不便さを解消して顧客経験価値を高めるといったことではなく、不便さを利用して利益を高めることになっているのではないだろうか、と思ったのである。

ベーシックプランとVIPプランの料金を比較すると、ベーシックプラン は36,750円安い。
そして、「追加料金(技能教習・技能検定・効果測定)ナシ」と書いてある。なおそれぞれ2回目以降は有料である。
追加料金はいくらかというと、18,375円。
つまり、通常、ベーシックプランで取っている追加料金を倍の値段で取れる仕組みなのである。
明確に書いてはなかったが、教習所側としてもお客から倍の値段を取る代わりに、キャンセル料(1,575円)はとらない、ということだろうか。
だが、そうであったとしても、11回キャンセルしてもベーシックプランの方がまだ安い。

いったい、VIPプランは顧客にとっての何のベネフィットがあるのでしょうか。

右脳アプローチのマーケティング

伝統的なマーケティングでは、機能面に力点を置いて差異化を進めてきた。
しかし、コモディティ化が進む市場では機能面で差異化を図っても、長期的にその地位をキープすることは非常に難しい。そこで、快楽面が注目されてきているという。

機能面は定量的に示すことが出来る。いわば左脳へのアプローチである。理論的に検討すればその優れているところは一目瞭然である。
快楽面は定性的に示すことになる。これは右脳へのアプローチである。理論的には表現しづらいし、人によってその評価も分かれるだろう。

ラビンドラ・チチェリー米リーハイ大学助教授らの実験によると、機能面での期待に応えられないと「不満」にとどまらず「怒り」が生じ、一定水準を超える機能であれば「安心や信頼」が生じたという。
快楽面での期待に応えられない場合は「不満」にとどまり「怒り」には至らない。しかし、期待を超えたベネフィットがあると「安心や信頼」よりも「喜び」に結びつく。
そしてこの喜びを得た人はクチコミを誘発され、強い再購買意欲も抱く。

これは、コロンビア大学のトリー・ヒギンス教授の制御焦点理論で説明できる。
人々は不快を回避し快に接近しようとするが、不快回避と快接近とでは異なる目標設定を持つため、その後の感情に違いが生じるという。
不快回避では防衛が、快接近は好ましい状態が目標である。
よって、機能的ベネフィットの達成は「安心や信頼」をもたらし、感情的ベネフィットの達成は「喜びや興奮」をもたらしているのである。
(参考)恩蔵直人, 日本経済新聞2009年2月27日朝刊『「非差異化」時代のマーケティング』「快楽」で差異化 第6回