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マイホーム、家賃払いながら頭金を貯めてから買うよりも、今すぐ買った方がいい?

この写真のチラシは某不動産物件サイトから送られてきたものです。
この中では、マイホームをいずれ購入するつもりなら、若いうちに手に入れた方がお得で、4500万円の新築マンションを例に、30歳と40歳とではファイナンス的に1000万円も違うとありました。

本当にそうでしょうか。


頭金なしで4500万円借金してマンションを購入し、家賃を払わなくてもよくなった30歳。
10年間家賃を払い、その間に頭金850万円貯め、3650万円借りてマンションを購入した40歳。
どちらがファイナンス的に優位な結果をもたらすのでしょうか。

結論を急ぐと、より現実に即したオプションとリスクを考慮すれば、必ずしも若いうちに購入した方がお得とは言い切れません。
借金はできるだけ小さく、短い方がキャッシュアウトは少なくなります。
お金だけじゃなく、価値観、家でやりたいこと、ライフスタイルなどを含め、どちらがよいか決めることが大事です。

マイホームと賃貸、どちらがよいかシミュレーションしても、変化の少ない人生であればキャッシュアウトに差がありません。
ただ、マイホームは夢を買う代わりに、地震や火災などで失うリスクを抱え、住む場所を変えられない、という人生における選択肢を狭めるというデメリットがあります。
それらをリスクとして計算に加えれば、マイホームの方が高くつくことになります。

ファイナンス的に新築マンションはできるだけ早く買うべきか試算

ここではお金のことだけを考えて、本当に若いうちにマイホームを手に入れた方がお得か検証してみたいと思います。

なお、諸条件は次の通り。
・家賃は月13万円、2年ごとの契約更新で更新料1か月分支払う
・借金の利息は年率1.6%、65歳で全額返済する
・住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)を利用する
・マンションの管理修繕費は年間36万円
・100歳まで生きるとする
・世帯主の生涯平均年収は約760万円とする
・このチラシには固定資産税、都市計画税、不動産取得税の考慮が入っていませんでしたのでそれも加えます。

30歳、新築マンションを購入

まず、30歳で新築マンションを購入すると決めた人の場合。
毎月の支出を13万円にしようとすると借金返済は元金と利息を合わせて10万円、管理修繕費を3万円となり、住居に関する合計費用は 9594万円になります。
問題は65歳時点の借金残高が2271万円もあることです。

(30歳で借金して新築マンションを購入し、65歳で返済する場合)
マンション 4500万円
利息    2008万円
管理修繕費 2556万円
固定資産税  800万円 (*8)
その他    130万円 (*1,*2,*7)
ローン減税 -400万円
——————-
合計費用 9594万円

65歳で約2300万円も残っているローンを返済できず、75歳までローン期間を延ばすと利息は2294万円となり、合計費用は9880万円になります。
75歳時点の借金残高は1274万円です。
ここですぐにわかる通り、借金の期間を10年延長したら利息が約300万円増えてしまいます。

(30歳で借金して新築マンションを購入し、75歳で返済する場合)
マンション 4500万円
利息    2294万円
管理修繕費 2556万円
固定資産税  800万円 (*8)
その他    130万円 (*1,*2,*7)
ローン減税 -400万円
——————–
合計費用 9880万円

40歳、新築マンションを購入

次に10年間賃貸で暮らし、その間に850万円の頭金を準備し、新築マンションを購入した40歳の場合を見てみます。
利息は30歳の約半分になり、合計費用は9897万円になります。
65歳時点の借金残高は1683万円です。

(40歳で借金して新築マンションを購入し、65歳で返済する場合)
賃貸    1612万円 (*5)
マンション 4500万円
利息    1180万円
管理修繕費 2196万円
固定資産税  600万円 (*8)
その他    103万円 (*2,*3,*7)
ローン減税 -294万円
——————–
合計費用 9897万円

30歳購入とと40歳購入の比較

費用の比較

新築マンションを購入した30歳と40歳とでは、40歳の方が300万円費用が多くなるように見えますが、実際にはほとんど変わりません。
次に説明するリスクと、住宅ローン減税を考慮するとわかります。

リスク(不確実性)の削減

30歳で購入したマンションですが70年間もち続けられるのでしょうか。
日本の鉄筋コンクリート造の歴史では今のところギリギリ。耐久性の問題から取り壊しになり、人生最後の10~20年間は引っ越すことになってしまうかもしれません。
そのリスク、不確実性は差額のマイナス300万円で買ったものです。
言い換えれば300万円多く支出すれば、このリスクを半分より小さくすることができます。

住宅ローン減税の有効活用

住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)とは、借入残高の1%分(最大40万円)の所得税を減らしてくれる、というものです(令和3年12月31日までに購入する場合)。
そして所得税をたくさん納めている人ほどメリットが大きい税制です。

実は今回の例にはお得に見えるようにするためのトリックが隠されています。
この減税を最大限使えるように「生涯平均年収を760万円とする」としているのです。760万円も稼いでいれば、400万円(40万円×10年)の削減効果があります。
でも、30歳でこの年収の人ってほとんどいないです。
しかし、年齢が上がれば年収は増える傾向にありますから、30歳よりは40歳でマイホームを購入した方が減税効果が大きくなります。

なお、 年間の所得税額は、月収40万円で23万円、月収50万円で40万円程度です。

中古マンションというオプション

さらに、新築にこだわらなければ中古というオプションがあります。
築10年の同じマンションなら15%安く、2975万円で購入できるでしょう。
しかも、頭金850万円があるので借金は約3000万円で、65歳で借金残高はゼロ円になります。

住宅に関わる合計費用は8149万円で、30歳で新築マンションを購入する場合と比べて1500万円は安く済みます。
1500万円の余裕があれば、マンションが築40年になったときに売って新しいマンションに引っ越すというオプションも持てます。

(40歳で借金して中古マンションを購入し、65歳で返済する場合)
賃貸    1612万円 (*5)
マンション 2975万円
利息     819万円
管理修繕費 2196万円
固定資産税  600万円 (*6)
その他    174万円 (*4,*6,*7)
ローン減税 -227万円
——————–
合計費用 8149万円

結論

緻密な人生設計よりもライフスタイルを考えることが無駄の少ない住居選びになるでしょう。
人生設計なんて、絶対に思ったようにできません。なぜなら自分一人だけじゃないからです。家族、親族、友人知人の影響を受けながら生きていくので、その通りにはならないのが世の常です。
一方、ライフスタイルとは、変化を好むのか、ずっと同じ場所に住み続けたいのか、ガーデニングしたいとか、キャンプなどのアウトドアをたくさん楽しみたいなどを意識することです。そのライフスタイルの中でマイホームが必須であれば家を買えばいいし、若くして買っても、年取ってから買っても、賃貸に住み続けてもファイナンス的にはほとんど違いはありません。
不動産は常に適切な市場価格で取引されているためです。

求めるライフスタイルと合わない買い物をしてしまうと、大きな損失につながる可能性がありますから、そこだけ注意して、ローンや減税など使える制度は上手に使うことがポイントです。

注記
*1: 住宅ローン4500万円のための信用保証料は借入額の2%とすると90万円。
*2: 新築マンション購入時の修繕積立金は30万円
*3: 住宅ローン3650万円のための信用保証料は借入額の2%とすると73万円。
*4: 住宅ローン2930万円のための信用保証料は借入額の2%とすると59万円。
*5: 賃貸でかかる初期費用(敷金、礼金、仲介手数料)は40万円。
*6: 中古マンションの仲介手数料は105万円。
*7: 不動産取得税は10万円程度。
*8: 固定資産税は、年20万円から10年ごとに3万円ずつ段階的に減少させ、築40年以降は6万円に固定。

賃貸物件

金額重視か利益率重視か

キャッシュを確保するための代表的な方策が2通りある。
1つは絶対的な収入の額を増やそうというものと、もう1つは一定の利益率を確保しようというものである。

例えばこんな感じになる。
A(前者)は、売上高100万円で利益が15万円。利益率は15%。
B(後者)は、売上高50万円で利益が10万円。利益率は20%。

さて、どちらの結果が優秀であろうか。

答えは考え方や方針に依存する。

現金を重視するのであれば、断然Aの方が良いといえる。Bと比べれば次に使えるお金が5万円多いのだから、その分を広告費に回してさらに売上を増加させるための思索が打てる。
効率が大切だというのであれば、Bの方が良い。Aよりも少ない投資でより多いリターンが得られる体質といえる。

金曜日は株式売買のタイミング?

anomaly (アノマリー)っていうんですね。

隔週で金曜日は資産運用管理の講義がある。その度に「今日の相場はよかったなー」と思いながら大学に向かっていることに気づいた。
もちろん、Dailyでの結果に一喜一憂していては超長期の運用はできない。

だが、今年の毎週金曜日の日経平均のデータを取ってみると、前日比プラスとマイナスが交互に発生していることが確認できた。今年になって概ね75%の確率でそのように動いている。
インデックスを安く売って高く売ることを基本とし、-の金曜日に買い、買値を上回った+の金曜日に売ったとすると、今年は2,271円のプラスである。1月5日の日経平均は17,091なので、約13%の利益。
1月5日から7月8日の間に、最高の条件(最安値で買い、最高値で売った場合)で1回だけ買売した場合で1,580円のプラスである。1月5日からは、約9%の利益。

信用取引が影響していることは確からしいが、理由はわからない。ちなみに、昨年はこのような傾向はなかった。
また、インデックスを買うにはベータが1のポートフォリオを作る必要があるから、それなりに資金が必要かも。

( * は、アノマリーが現れなかった日)

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株式の期待リターンとリスク

市場価値は日々刻々と変化する。けれどもどこまで上下するのだろうか。
例えば、国内株式の場合、100万円投資した場合、3分の2の確立でマイナス13万円からプラス30万円の範囲で動く。逆に3分の1の確率でこの範囲を超える。
また、長期的にはインデックスと同程度に収束していく。

もちろんこれだけでは判断できないが、これを利用すれば売買の判断の助けになる。
例えば、100万円投資して、マイナス10万円になってもまだ想定の範囲内であるから、待ってみるのも悪くないかもしれない。

統計的に、株式と債権の長期的な期待リターンとリスクは概ねこんな感じらしい。
損益は「期待リターン±標準偏差」となる。

無題
さて、資産運用における重要なことは、リスクを管理することである。リターンを管理することはできないが、リスクなら管理できる。ここでいうリスクとは標準偏差のことである。
リスクを小さくするということは、この標準偏差のブレをいかに小さくしていくかということである。
分散がその一つの方法であろう。