小山内 裕

不満の裏には商機あり

米国の医療保険改革が新聞で紹介されていた。

国民皆保険。世界でも稀な制度で日本では既に実現している。
70% OFFで医者にかかったり、薬を買うことができる。

米国では任意で保険に加入することでリスクをヘッジする。
だが、家計が厳しい人は医療費支出のリスクどころか、健康に対するリスクもとらざるを得ない。
そこで、この度、米国でも100年の時を超え実質皆保険を目指すが制度化された。

だが、企業にとっては大いに不満であるという。
それは私も理解できる。
保険料を負担するだけでなく、各従業員ごとの保険料の計算、徴収、払込はこの上なく手間がかかる。
国から報酬をもらいたいくらい手間がかかる。

・入社、退社の度に資料を提出しなければならない。
・保険料は1円未満の端数もあってややこしい。
・被保険者負担分の端数は四捨五入ではなく、50銭以下は切り捨てとする。
・介護保険第2号被保険者は、40歳以上65歳未満の方であり、保険料が異なる。
・それに半年毎に保険料率が変わり、その度にこれらを繰り返し確認しなければならない。
・賞与からも保険料を徴収しなければならず、計算方法が異なるし、支給額等について毎回提出しなければならない。
などなど。
さて、不満を持っている企業が多いということはビジネスチャンスでもある。
・制度を正しく理解し、実行や支援できる人
・申請や保険料計算をするアプリケーション
・既存の人事システムのenhancement
・人事担当者への教育
など。

不満の裏には商機あり、ということでしょう。

Facebook と TDR の共通点は?

米国にて、3月の第2週、訪問者数が一番多かったWEBサイトは...
Facebook だったそう。
(米ヒットワイズ発表)

これまで首位の米グーグルをついに追い抜いた。
「検索サイト=ポータル」という方程式が崩れつつあるのかもしれない。

検索サイトがネットのポータル(入り口)でなければならないということは、当然ない。
これまでは、ネットに何があるのか、探し物がどこにあるのかわからなかったから、検索サイトがその手助けをしてきた。
だから、必然的に検索サイトがネットのポータルという役割も持つことになっていた。

だが、ネットがある程度整理され、また、分散していた情報が集約され、いくつかの大きなサイトで用が足りるようになってしまったら検索サイトの存在感は薄れてしまうだろう。
次は、日本。
顧客満足度ランキングの1位は...
東京ディズニーリゾート(TDR)。
(サービス産業生産性協議会発表。小売・サービスなど29業種291社が対象の調査)

2位以降に低価格が売りの企業が続いているのを見れば、TDRが別格だと言える。
それなりにコストを払うことになるんだけど、それを超えて満足させているというのは、多くの企業が目指したいと思うんじゃないでしょうか。
それはつまり、とても高い付加価値を創出している、ということだから。
さて、Facebook と TDR の共通点は何だろうか?

1つは「場」である。
Facebook は人を知り、つながる場。
TDR は夢のような体験ができる場。
どちらも、物やサービス、情報自体の価値が高いわけではない。お客の積極的な行動を伴って価値が生まれる「場」であろう。
TDRは「そこに居るだけで幸せ」という人は少なくない。

そのほかの共通点は、えーと、それだけかな。

任せることのできない管理職、結局時間があるから

権限を与えたら、それに対し全責任を持たせるのと同時に、信頼して任せることが大切だ。
なぜって、まず何よりやる気になるじゃないですか。

「後はお前に任せた、お前が決めろ」

と言われたら、
俄然やる気になる。自分のため、組織のため、最良の結果を出そうと最善を尽くす。
後で、良かった点、悪かった点を反省し、次につなげることで成長する。
重圧を乗り越えた経験が自信につながる。

それだけじゃない。
任せた方も仕事量が減り、別の領域に進出できる。
周囲の人たちも、上へ引っ張られる。
しかし、しかしである。

「任せた」と言いながら、意思決定が自分の意向に沿わないと認めない。
「そんなのダメだ。こうしろ。」と指示する(アドバイスじゃなく)。
出来上がったものを手直ししてしまう。
他の人にやらせてしまう。
「俺がやる」と言い出す。
...無責任な行動です。

いったん任せたんなら、要件を満たしている限り、任せとおすのが人としての筋でしょう。
結局、任せられない人が少なくない。
これが続けば、やる気は失せ、成長は見込めず、自分は「忙しい、忙しい」と言い、次の一手が後手に回る。
スカイマークの機長(派遣)が風邪のため声が出せないCAの交代を求めたら、社長と会長が出てきて機長の方を交代させた。
社長と会長は暇なのかな?
機長の権限が明示されているんだから、任せるべきである。

機長は事故が発生したら、誘導するときに大声が出せないと安全が確保できないという理由でCAの交代を求めた。
特に、パイロットは、万が一のとき、自分だけが助かるという策はない。乗員も乗客も互いに命を委ねている側面もある。地上にいる人たちとは状況が違う。
なおさら、権限を尊重すべきだ。
権限を与える時に、もう1つ必要なのはチェック機能です。
要件(目標)を決めて、チェック(測定)する仕組みを持つことです。

低価格、高性能、顧客関係・・・どれが1番重要か

Michael Treacy, Fred Wiersema (1995) THE DISCIPLINE OF MARKET LEADERS,
(小原進訳 (1995) 『ナンバーワン企業の法則―カスタマー・インティマシーで強くなる』 日本経済新聞社)
を本棚から引っ張り出し、改めて読んでみた。
次の3つの中で、あなたのビジネスにおいて1番重要なものはどれか?
・低価格商品の提供
・高性能商品の提供
・顧客との関係構築

この問いに「全部」と答えた人は成功が遠い、という。
プロローグで「本書は、走るべきそのレースをどう選ぶかを論ずるものである」と言っている。
さらに、「いかなる企業も、すべての人にすべてのことを与えようとしては成功できない」とも言っている。
そして、「成功するにはその企業だけがある選ばれたマーケットに提供できる独特の価値を発見しなくてはならない」と。
【重要な3つのコンセプト】
第1:価値理念の提示
価格、品質、効率、選択、便宜性など

第2:(価値理念を起動力とする)オペレーティング・モデル
経営システム、ビジネス構成、企業文化など

第3:(価値理念とオペレーティング・モデルを組み合わせて市場での最善にする)価値基準
価値基準は次の3つ。
オペレーショナル・エクセレンス
プロダクト・イノベーション
カスタマー・インティマシー

(オペレーショナル・エクセレンス)
平均的な製品を最良の価格で、効率的に提供する。
コモディティを最安値で提供できる仕組みを持った企業といえる。

(プロダクト・イノベーション)
革新的な他にはない商品を提供し続ける。
製品の性能での競争である。

(カスタマー・インティマシー)
顧客との親密性を徹底的に追求する。
カスタマー・リレーションシップを重視することである。

【価値基準の選択】
3つの価値基準全てを身につけようとすべきではないし、1つを選択して残りの2つを放棄することでもない。

価値基準の選択をするには、自分の顧客が最も気にかけていることを知らないといけない。
だが、一般的に顧客に何を求めているか聞けば、値段は安く、革新的な商品を、顧客との接点を多くして欲しいというだろう。
つまり、全てを望んでいるわけである。
この顧客の声によく耳を傾け、顧客が望むとおりにする企業はずるずると坂を転げ落ちていく。

Clayton M. Christensen (1997) THE INNOVATOR’S DILEMMA,
(伊豆原弓訳 (2000) 『イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』 )
でも見られるように。

これらの例は、成功の大小に関わらず、多くの企業(経営者)に見られる。
「どれが一番大事か。さらなる成功のためには何を優先的に為すべきか」という質問に、「全部大事だ」と答える。
「では、何から最初に手をつけるか」と聞くと、1つ選ぶが、しばらくすると忙しさや、売上低迷の恐怖から、全てに満遍なく手を付けている。

今日のマーケットリーダー企業は、自らが強調しようと選んだ価値の1要素で顧客の期待感を高めている。