新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、外国を助けられるほど余裕のあるベトナムがとった施策とは

ベトナム政府は日本、イタリア、フランス、ドイツ、ロシア、ラオス、カンボジア等に医療用マスクや医療物資の寄贈を行いました。
日本含め、寄贈していただいた各国は自国のことで精一杯ですが、ベトナムは余裕があるとのことです。
米ジョンズ・ホプキンズ大学が公開しているデータによると4月21日現在、ベトナムにおける新型コロナ感染者は268人、死者0人です。
一方、日本の感染者数は1万人に達しようとしています。
ベトナムの人口は日本より2割少ないですから、その分差し引いても30倍も優秀という結果を出しています。

そういえば、ベトナムに出張で行ったときに、ベトナムの方がベトナムの平均年齢は非常に若いということを話していたことを思い出しました。ベトナム戦争の被害の甚大さを物語っています。
新型コロナウイルスは高齢者の方が症状が悪化しやすいということなので、もしかしたらこの余裕は平均年齢からくるのだろうかと思い調べてみました。
経済産業省のレポートによると2018年のベトナムの65歳以上の人は全体の7.3%です。日本は28.%で4倍多いですが、30倍の差がつくほどの理由にはなりません。

他の理由を探してみましたら、ベトナムでは日本よりもずっと早く、強く、具体的な施策を行っていました。

日本より10日間以上早く、強い入国制限

2020年2月3日、過去14日以内に中国本土に滞在歴のある外国人の入国を拒否し始めました。この時ベトナム国内の新型コロナ感染者は10人です。

在ベトナム日本大使館(2020/2/6)「ベトナム国内における新型コロナウイルス関連発表(続報)

一方このころの日本はというと、2月1日から、過去14か以内に中国 湖北省に滞在歴のある外国人の入国を拒否し始めています。日本国内の新型コロナ感染者数はまだ6人です。
ベトナムと日本の対応はそれほど変わらないように見えるかもしれませんが、違いは、入国を拒否する対象の広さです。ベトナムは中国全土を対象としましたが、日本は湖北省に限定しておりなおかつ、例外的に入国できるケースもあったようです。

2020年3月21日、ベトナムに入国する全ての者に対して集団隔離を実施しました。この時ベトナム国内の新型コロナ感染者は85人。

在ベトナム日本大使館(2020/3/20)「ベトナム国内における新型コロナウイルス関連発表(入国者の隔離)

感染者数85人というのは日本では2月19日時点に相当します。

日本は累計の感染者が3千人を超えた4月3日から同様の水際対策を強化しましたが、日本に入国・帰国する者に対して自宅での14日間の待機を「お願い」するというものでした。
日本では3月24日の段階で、海外で感染した人たちが検疫をすり抜けて入国している事実を多数確認していたにも関わらず、ベトナムよりも10日間以上も遅いですし、対策も緩いものでした。特にヨーロッパからの帰国者の感染が目立ちました。

入国規制が1つめの日本とベトナムの大きな差です。

日本より1週間以上早く、具体的な緊急事態宣言

ベトナム政府は、新型コロナ感染者がおよそ200人であった4月1日から全国規模の社会隔離を実施しました。

在ベトナム日本大使館(2020/3/21)「ベトナム国内における新型コロナウイルス感染症関連発表(3月31日付首相指示第16号の概要)

なお、感染者数200人は、日本で2月下旬です。

日本政府が東京など一部の都府県に緊急事態宣言を出したのは、4月7日、感染者数が4500人に達しようという時です。
圧倒的にベトナムの方が俊敏で危機意識の高さも感じられます。

ベトナムのソーシャル ディスタンシングの指示は日本よりも具体的な内容でした。

数字でソーシャル ディスタンシングを指示

日本ではソーシャル ディスタンシングについて、「3つの密」と小さな子どもでも理解できるような言葉に収めました。

日本政府が発出した緊急事態宣言はベトナムのそれと比較して非常に曖昧で、国民1人1人、各自治体、各会社などに具体的な対応が任されました。「不要不急の外出を控える」ということの他、どの業種に休業要請を出すかに腐心してしまったように見えます。

それについて文句や不満を言うつもりはありませんが、結果を出しているベトナムの具体的な要請は参考になります。
これが2つ目の差です。

ベトナムが2020年4月1日から15日間実施した全国規模のソーシャル ディスタンシング
(1)全ての国民は自宅待機。
(2)本当に必要な場合に限って外出可とする。
(3)挨拶や会話は、2メートル以上の間隔をあける。
(4)会社、学校、病院外、公共の場で3人以上集まらない。
(5)企業など組織の長は、感染症対策の実施、従業員の健康・安全の確保に責任を持つ。
(6)原則として公共交通手段による旅客運搬を停止する。

在ベトナム日本大使館(2020/3/31)「ベトナム国内における新型コロナウイルス感染症関連発表(3月31日付首相指示第16号の概要)

なおかつ、感染リスクに応じて都市を3つのグループに分類し、それぞれのグループに異なるソーシャル ディスタンシングの指示を出しています。

在ベトナム日本大使館(2020/4/15)「ベトナム国内における新型コロナウイルス関連発表(社会隔離措置の継続)

最後に

早め早めの完全を目指した対応、危機に直面した時の感性の高さ、決断の俊敏性、具体的な指示、責任の所在の明確化、これらが後にベトナムに余裕を持たせていることがわかりました。
しかもそれらは新型コロナ対策に限らないでしょう。企業においても同様のことが言えます。危機に直面したときにどう対応するかが、生き死にを分けるのは言うまでもないでしょう。

出典

在ベトナム日本大使館(2020/4/17)「ベトナム政府による医療用マスク等寄贈式

米ジョンズ・ホプキンズ大学「Coronavirus COVID-19 Global Cases by the Center for Systems Science and Engineering (CSSE) at Johns Hopkins University

外務省「ベトナム社会主義共和国(Socialist Republic of Viet Nam)基礎データ

経済産業省(2020/3)「医療国際展開カントリーレポート 新興国等のヘルスケア市場環境に関する基本情報 ベトナム編

総務省統計局(2020/4/20)「人口推計

NHK「特設サイト 新型コロナウイルス