Management

時代は変わったのか

『「潮目が変わった」から「時代が変わった」に改め』ている、というのは、トヨタの渡辺社長の言葉である(2008年8月21日 日本経済新聞 朝刊)。

1990年代を境にグローバリゼーション、インターネット、IT化が益々進んでいる。
このことは誰もが認めることであるし、いまさら事細かに話す必要もないように思われる。
以前とはまったく違う考え方、手法が主流になっているというよりも、それに対応できない者は淘汰され、うまく対応した者は躍進する。そういったところに時代の新旧が見て取れる。

しかしながら、私たちの頭の中はまだこの変化に対応し切れていないのではないだろうか。特にその働き方。

「グローバリゼーション」。以前は「国際化」という言葉がよく使われたがそれとは意味が違う。
「インターネット」があれば会社に行かなくても仕事ができる、といえるだろうか。
「IT」とは、コンピューターやソフトウェアを導入することではない。

これらについては追々書きたいと思います。

約束の時間

定期的に会っている、ある方がご自分のご子息のことをお話しした。
そのご子息は会社を経営しているのだが、信用を得てそれなりにうまくやっている、ということをご子息の会社の同僚から聞いた、という話である。
その同僚によると、約束は必ず守る、ということがうまくやっているひとつの理由のようである。
「約束は必ず守る」とは至極当たり前に聞こえる。

私はその定期的な会合において、だいたい5分くらい遅れて行っていた。時に、直前になって20分くらい開始時間をずらしてもらったこともある。それは場所がバスや車でないといけない場所なので、なかなか時間が読めないからであった。早めに出たつもりでも渋滞のため遅れることがしばしばであった。

そんなときに聞いた話しであった。
納期の時間だけではなく、待ち合わせの時間にも絶対に遅れないというのである。一見当たり前の「約束は必ず守る」ということであるが、実は容易ではない。

その時から、自らの行動をレビューし修正をかけた。
社内のプロジェクトで、それほど重要な要素ではなくとも、1秒の遅れも自分に許さず、必ず納期は守るよう心がけた。予期せぬ事態で、十分言い訳が通用する状況であっても、納期を死守すべく最善を尽くした。
もちろん、会合においても常に時間通りの開始を徹底した。

こうやって改めて書いてみると、当たり前のことである。しかしながら、それは楽ではなかった。恐らく、それほど時間に厳しい人でなければ、5分、10分の遅れは気にもしないだろう。
でも、「約束は必ず守る」活動を続けて3ヶ月ほどして、私の約束に対する信頼が付いてきたことを実感した。また、私が約束をするということは、次に続く作業を担当する人にプレッシャーになったようである。

100%約束を守ることは、100%の信頼獲得の最低条件。
ということであれ以来、時間は厳守である。それでも、どうしても時間に遅れてしまうことがある。そのときは相手の貴重な時間を無駄にしてしまったと、本当に申し訳なく思う。

サバンナとガラパゴス

最近、私は自転車で通勤している。片道約10kmである。
コースは2つあって、サバンナコースとガラパゴスコースだ。

サバンナコースは、大通りを走る。正確には9kmを25分で走る。平均時速22kmである。
多くの車が私の横を走り抜けていく。
バスも走っている。バス停で止まるため、抜いたり抜かれたりするときもあるし、うまく後ろをついていけることもある。バスの 後ろにつくことを他の車は避けるので、走りやすい。
当然トラックも走っている。大きな音を立てながら後ろから迫ってくるので時々怖い。
バイクも走っている。これも乱暴な運転で私の横をかすめていく場合がある。
自転車も走っている。風が強いときは時々後ろについて楽をさせてもらうこともある。
信号が多い。タイミングが悪いと1つおきに赤の場合がある。なので、できるだけ急いで青、青、青で行けるようにする。

このようにサバンナコースでは、私は環境に影響されながら、または利用しながら走っていくのである。
車と一緒に走るので危険を感じる。とても緊張する。
そのためマイペースで走ることは難しく、速度は少し速めである。
ガラパゴスコースは、主に多摩川の土手を走る。正確には10kmを35分で走る。平均時速17kmである。

10081294640_s土手では車もバイクも走っていない。通れるのは、人と自転車、小動物だけだ。
時々やたら速い自転車が私を追い越していくものの、人も自転車もまばらで、マイペースで走れる。
風景もなかなか良い。空を見たり、川の向こう岸を見たりしながら走る。
とてもすがすがしく気持ちが良い。
時々、横を走っている車の列が途絶え、シンとすることがある。虫の音、風の音、そして自分が自転車を漕ぐの音しか聞こえない。
当然緊張することはなく、のんびりとしたものだ。
サバンナは環境の変化が激しく、油断していると命を落とす。そのため、絶え間なく、早く進化・進歩する。その代わりゆっくりとはしていられない。
ガラパゴスは環境の変化、危険が少ない。とてもゆったりとした気分でいられる。今のままでいいので、進化・進歩することはない。
企業もこれらどちらかの環境に身を置いている。ほとんどがサバンナではないだろうか。サバンナを走り続けていると見も心も疲弊してしまう。時にはガラパゴスでのんびりしたいものだ。
サバンナの中でガラパゴスを見つけ出す。ブルオーシャンがそれではないだろうか。ブルーオーシャンは永続しないが、それを作り出した企業は心身ともにリフレッシュし、まもなくやってくるレッドオーシャンの到来に備えられる。レッドオーシャンを乗り切る力があれば、気づいたときにはまたブルーオーシャンに出ているかもしれない。

企業の体力をつけるためにもブルーオーシャンの絶え間ない開発は、永続性を実現する経営の勤めではないだろうか。

これからの日本 知識・情報、つまり付加価値が鍵

先日、「アジア太平洋への新しい視界」と題した日総研フォーラムに参加してきた。

(以下、敬称略)
今回は第7回目であり、姜尚中(東京大学大学院情報学環教授)とアーサー M. ミッチェル(ホワイト&ケース外国法律事務弁護士事務所)をパネリストとして迎え、寺島実郎がコーディネーターを努め、さらに最後に総括講演を40分ほど行った。

さて、現在のままの日本では、世界的にその存在感を失いつつあることは確かであろう。国内の問題に気をとられ、世界への貢献が疎かになっているためと言える。
今後いかにして、世界へ貢献していくべきかを真剣に考えなければならない。
このフォーラムでの結論を始めに書くと、日本役割は次の3つに集約されるという。
1) 米国をアジアから孤立させない
2) 中国を責任ある国として国際社会に招き入れる
3) 日本の経済力に見合う情報力の増強
ということである。

次に、私なりの結論としては、資源が少ないので、日本は自給自足で成り立たせることは不可能であろう。
エネルギー問題、食糧問題、少子高齢化による労働力減少が進んでいる。
つまり、他国に頼らざるを得ない状況に変わりはない。
輸入してtakeするためには輸出 giveが必要である。そして何をgiveするかが重要な問題である。
急激にアジア諸国の労働コストが上昇しているものの、まだまだ労働生産性では日本に勝ち目はない。
付加価値で勝負するしかない。付加価値とは、情報や知識である。
情報や知識のgiveを通して、アジア諸国と連結・連合していくことを通して、その存在意義を見出していくことができるだろう。
事実として、円安とドル安が同時に進んでいる。
200年から、円は対ユーロ、対オーストラリアドルと対NZドルでは半減している。

世界のリーダーを自認してきた米国も、影響力が急速に低下している。世界の諸問題に積極的に関与してきたものの、イラク戦争は世界の反発が少なくないだけではなく、4,000人を超える米軍兵士が失われ、3兆ドル(J.E. Stiglitz推計による)を超える戦費は軍需景気を誘発することなく、浪費に終わると言われている。
さらに、米国政府はサブプライム問題に対して、資金の投入をせざるを得ない。
環境問題については経済を優先させる姿勢から京都議定書から離脱し、諸外国との関係に微妙な不協和音が聞こえる。

日本はというと、極東アジアに位置しながら、アジアよりも米国を中心とした西欧との関係を深めてきた。そのため、北朝鮮や中国は日本にとってのブラインドスポットとなっている。
これまで築き上げた米国との関係を維持しつつ、アジアとの関係をより強化していくことが必要であろう。

余談だが、私の個人的な経験において、ビジネスにおける習慣はアメリカ人とはよく肌が合う。しかし、中国人とマレーシア人とはなかなか難しい場合が多かった。これはほとんど文化の違いといってもよいであろう。その違いのために苦労した経験は非常に多い。文化は変えられないから、対立した部分でお互いが歩み寄ることはまずできない。求める結果は同じであるから、違う点は目をつむってお互いがやるべきことをやるしかない。
もちろん、ごくまれであるが、同じ考え、同じやり方を持つ人もいるので、そのような人たちと一緒に仕事をするときは、物事がスムーズに進む。

中国については多くが周知の通りである。
チベット問題、毒素含有量が多いなどの製品品質問題、著作権侵害の問題、環境問題が世界の反感を高めている。
北京オリンピックがネガティブに作用している。
WTOに加盟し、中国がいかに責任を果たしていくか注目を集めているが、隣国の成熟した国がどう振舞うかも注目される。