日本より中国重視、米で過半に ———————-
国際問題研究などを手がける米シカゴ・カウンシルが28日に発表した米国人の日本に関する意識調査から。
日本よりも中国を重視する人が過半を占める結果が出た。
米国の利益にとって日本と中国のどちらが重要かとの二者択一の質問に「中国が重要」との答えは51%となり、「日本が重要」(44%)との回答を上回った。
(2008年10月30日 日本経済新聞 朝刊より)
これを最近の動向から解釈すると、日本の果たす役割が小さくなってきているからだ、もう日本は欧米にとって無用となりつつある、と考えてしまいそうですが、ちょっと立ち止まって多面的に考えて見ます。
まず、「米国の利益にとって日本と中国のどちらが重要か」はどのように捉えて回答されたのでしょうか。「重要」という言葉の捉え方によって回答も変わりそうです。
そこで、原文を探してみましたらありました。
American Attitudes on U.S.-Japan Relations ————-
On Tuesday, October 28, 2008, The Chicago Council on Global Affairs released a report of American views on the importance of the U.S.-Japan alliance. While many Japanese analysts and commentators have worried that the United States is losing interest in Japan, especially with the rising importance of China, the study found that the rise of China is increasing the importance of the U.S.-Japan alliance; Americans continue to see Japan as an influential partner in the international system.
On a 0 to 100 thermometer of feelings (with 0 meaning a very cold, unfavorable feeling and 100 meaning a very warm, favorable feeling), Japan ranks well ahead of China, with a mean rating of 59 compared to China’s 41.
57% of Americans are prepared to see Japan change Article Nine of its Constitution to allow Japanese forces to engage in a wider range of military activities. That is higher than support for Constitutional change among the Japanese public.
83% of Americans are opposed to Japan developing nuclear weapons, and majorities agree that Japan’s pursuit of nuclear weapons would violate commitments under the Nuclear Non-Proliferation Treaty and encourage other countries to develop nuclear weapons.
Full Report (PDF)
(http://www.thechicagocouncil.org/dynamic_page.php?id=76 )
「Full Report」の中で、「vital interests」という言葉を使っています。「米国に最大限の利益をもたらしてくれるのは日本と中国のどちらかといえば、中国だろう」ということです。
さらに、「だからといって、日本無用論を持ち出すのは早計」だと述べています。その理由として、
・日本は、中国の下位に位置するが、上位国であり、米国にとって重要な国であることは確かである。
・米国民は、日本を身近に感じている。中国はどちらかというとまだ遠い存在で、それは日本よりも18%低い。さらに、その差は2000年を境に年々開いている。
・国際的な影響力についても、日本は中国より下回るが、なお上位に位置している。これはヨーロッパに対するアジアの存在感の高まりを表している。
・中国との通商取引は日本のそれと比べて不公であるという意見は30ポイント高い。
さて、こういったことを踏まえて総括すると、米国にとって中国は良き同盟国として、その重要性が高まっているとは言い切れないのではないでしょうか。確かに中国はなくてはならない存在ではありますが、まだ温かい関係まで至っておらず、警戒すべき国でもあるのです。中国との関係はdeveloping areaであり、その意味で重要と考えているようです。
やはりイギリスとの関係が最も重要性が高いわけですが、アジアという単位で見た場合、日本との関係は、最も特別なものであるという認識を持っていることがわかります。
経済的な日本の影響力は低下していますが、技術と革新面における国際社会に対する貢献はとても期待されています。
しかし、それと比べてしまうと、アジア圏でのリーダーシップ、国内システム、他国への経済協力はそれほど期待されていないように思われます。それらが国際社会における日本のdeveloping areaではないでしょうか。
なかなか日本の中にいると日本を客観的に見ることは難しいものですが、これをひとつのデータとして受け止めて考えてみると、なかなか興味深いものです。