小山内 裕

第6番目の力 – 競合他社も含めた戦略の必要性

米投資ファンドのスティール・パートナーズが世間を賑わせている。
即席めん業界第4位の明星食品株やビール業界第3位のサッポロホールディングス株の大量保有をすすめ、TOBをかける。それにより株価が過熱したところで売り逃げる。
さらに奥の手も持っていて、株価が上がらなくても利益が出せることを事前に確認している。
そして、それぞれの業界トップの日清食品やアサヒビールは、ライバルであるはずの会社を救おうと努力している。

さて、5 Forcesをご存知だろうか。ハーバード大学のM.E.ポーター教授によって唱えられた経営戦略フレームワークの1つ。
このフレームワークって漏れなく企業を取り巻く環境を考慮した戦略を立てられる。
5 Forces、5つの力には
(1) 新規参入業者
(2) 競争業者
(3) 代替品
(4) 顧客(買手)の交渉力
(5) 供給業者(売手)の交渉力
がある。

例えば、サッポロホールディングスにとって、スティール・パートナーズはこのどれに当てはまるだろうか。
ポーターの5 Forcesでは登場しない。どれにも当てはまらない。第6の力である。
これは運命共同体であるはずの株主あるいはグリーンメーラーだ。
株を公開している会社はこの第6の力を無視できない。対策として柔軟に大量の新株を発行できるように定款を書き換えるなどがんばっている会社は多い。

さらに視点を変えて、アサヒビールにとってのスティール・パートナーズは何だろうか。
競争業者の株主。自社とは直接関係はない。競争業者で起こっている出来事である。
しかし、スティール・パートナーズが大株主になるのを防ぐため、アサヒビールはサッポロとの資本提携を検討している。
業界2位のキリンビールに大きく水をあけることができる。

これからは自社に起こることだけではなく、他社の財務状況や資産状況などを把握し、他社で起こることにも備える必要があるということだ。

素晴らしい仕事をするより、いかにして仕事を素晴らしくするか

今私は素晴らしい仕事をしているだろうか。私の子どもに誇れる仕事をしているだろうか。そして子どもが私の仕事のどこが素晴らしいか話せるだろうか。
誰もがわかるように私の仕事の素晴らしさを説明できるか考えた。

これが以外に難しい。

私が勤める会社はパソコンなどを製造して販売している。私はそこでエンジニアとして働いている。これは素晴らしい仕事といえるだろうか。同様の会社は他にいくらでもあるし、私と同様のエンジニアもたくさんいる。
または、大きな金額の商談をまとめることが素晴らしい仕事であるのだろうか。

この発想は違う。

問題は素晴らしい仕事をするより、いかにして今やっている仕事を素晴らしいものにするか、ではなかろうか。
例えば、日本古来の製鉄法である「たたら製鉄」がある。職人の技と勘が必要とされる。
この仕事の素晴らしいところは、この製鉄法を千年以上も受け継いでいる、その人ではないだろうか。教わった技術はそのままでは使えない。状況に応じて判断して技術を発揮していく。

リモートオフィスの限界

多くの方は感覚的に、またはある人は実感をもって認識していることかもしれません。チーム本体から離れた場所で仕事をすることの限界について。最近、私は限界を思い知らされています。

私が所属する組織のメンバーは、日本、中国、マレーシアに分散しています。およそ半数のメンバーはマレーシアにおり、その中に私の上司がおります。また、私がマネージャーを努めるチームのメンバーは中国におります。
つまり、私の上司とチームメイトの多くがマレーシアにおり、私の部下は中国にいるわけです。

この組織が編成されたときには、離れた場所にいるけれども情報共有を進めて、お互いに職務遂行能力を向上させられるようにがんばろうと思っていました。しかし、今のところほとんど進展していません。
私が考えるに次のような理由があります。

1. 文化の違いによるギャップ
文化が違えば何が違うかというと、大切にするポイントや仕事の進め方が違います。例えば日本では職務範囲や責任範囲があいまいですから、何か物事を進めるときにその背景を理解し、周辺のことにも注意を払います。しかし、国によっては明確に責任の範囲を設定し、それを超えることは絶対にしません。結果的に私から見れば柔軟性に欠け、手続きを増やしているだけに映ります。

2. 外部環境の違いによるギャップ
会社を取り巻く環境、競合相手、顧客、社会の状況が異なれば物事に対する優先付けも変わります。
私が日本の社会的な状況を踏まえてこれは重要だから徹底させたいと考えても、他国ではまったく問題視されていない場合、優先度が低くなります。日本の人件費は高額ですから、いかに人を使わずに、短時間で終わらせるかをベースに全てを考えていますが、人件費が安い国では最初にそのことを考えることはありません。

3. 暗黙知の共有ができない
暗黙知とは、文書にしたり話したりと形式化しにくい知識のことです。雰囲気とか~のような感じといった感覚的なものです。その積み重ねから話すことができる知識が生まれます。
SECIモデルによると暗黙知を形式知にする繰り返しで、組織における知識レベルの向上を実現できるのだが、その出発点は暗黙知なのです。つまり、この暗黙知がないとSECIモデルは回せず、知識レベルの向上もできない、ということです。本当に私は当初情報提供によりこの不足するであろう部分を埋めようと考えていたのですが、お互いに意識がないと受け取ってもらえないですね。

離れ離れで仕事をしていると、会社に来ているのかどうかさえもわからないし、どれほど忙しく働いているのか、または余裕があるのかもわかり合えません。見えるところにいれば、いちいち話さなくてもそういった状況はおおよそつかめます。
離れているので、頻繁に電話やメールでやり取りをしています。特に私の部下とは意識してコミュニケーションをとっています。これは内向きのコミュニケーションに時間を割いているのです。外向きのコミュニケーションもとらないといけないので、それも行います。すると自分自身の仕事はほとんどできないのです。ここにジレンマがあります。

正直に既に半年以上が経過しましたが、組織を変更したことによって得られたものはほとんどありません。
実は暗黙知の共有ができれば、先に書いたギャップのほとんどを埋めることができるのではないか、とも考えています。

この問題の解決策を出すとすれば「相互理解」でしょうか。
↓「暗黙知」や「SECIモデル」についてはこの本がわかりやすいでしょう。

 

おもしろさを組織論で解説すると、

「のだめカンタービレ」めちゃくちゃおもしろい。毎回ワクワクしながら観ていますよ。
このドラマの面白さは組織論にある!社会に出れば多くの人が経験できることを象徴的な物語であらわしている。

見ている人をワクワクさせたり、感動させるのは、登場するオーケストラのチームワーク、そこにいる人達の関係ではないでしょうか。みな、それぞれ問題を起こしたり、問題を抱えながらも、生き生きと、楽しそうに、やる気をもって演奏している。充実しているメンバー達。
毎日こんな風にして仕事ができたら幸せではないでしょうか。この秘訣はどこにあるのでしょうか。

(モチベーション)
あなたは仕事に対するやる気は何から湧いてくるだろうか。
やる気(動機付け)の源泉は外発的なものと内発的なものに分けられる。
外発的動機付けとは、お金、物品、役職など外(他人)から与えられるものである。
内発的動機付けとは、本人の考えや気持ちなど自発的にやる気にさせるものである。例えば、仕事そのものが楽しいとかやり遂げたときに充実感を感じるなどである。
外発的動機付けとして満足するだけの給料を上げ続けることにはすぐに限界が訪れるが、内発的動機付けは自己生産し続けるため長期的に及びやすい。ただし、せっかくのやる気を削ぐようなことがなければ、である。

「のだめ・・・」では、一部の優秀な演奏者たちが間近に控えたコンテストでの優勝、また大家に認めてもらいたいという外発的動機付けにより、オーケストラでの練習もそこそこで個人練習に時間を割いた。結果、ある女性は2位で周りから祝福されながらも、1位がとれなかった失望感で一杯であった。一方、その後のオーケストラの練習では指揮者の描く音楽のイメージに触発され、自分の心の内から演奏することの楽しさを味わう。コンテストのときよりも楽しく、やる気をもって生き生きと演奏する姿が描かれている。
また、別のメンバーは、コンサートのポスターに書かれたその人の名前の前に付けられた褒め言葉に近づこうと自らやる気を奮い起こし、練習に腰を入れ始めた。
(リーダーシップ)
オーケストラでは指揮者がリーダーである。優れたリーダーシップとは何であろうか。多くのリーダーシップ論で共通しているのは次の2点である。1つはチームを取り巻く環境づくり。2つめはメンバーへの配慮である。

「のだめ・・・」では、指揮者はオーケストラを取り巻く環境づくりとして、曲の理解に寝食を忘れて取り組み、それをメンバーに真剣に伝えようと努力する。そういった行動を通してそのオーケストラが目指すべき方向性を示す。メンバーは迷いなくそのベクトルへ向かって行く。あれこれ周りを気にすることなく練習に取り組む。
メンバーへの配慮としては、信頼を寄せ、メンバーの気持ちを大切にしている。あるとき楽譜通りに演奏しろ、メンバーの個性は入れるな、それで十分だと言っていたことがある。メンバーは納得はできないながらも言われた通りにした。そうするとその指揮者が思っていたものとは全く違う「気持ちが悪い」オケができてしまった。また、メンバーはそのオケに愛着は持っておらず、ただ楽譜通りに演奏するだけとなってしまった。これを契機に指揮者は考えを改め、個人を尊重してリードするように変えた。そうしたら、メンバーは自らのオケに愛着と誇りを持ち、非常に躍動感あるオケができた。

もう一つ注目したいのが、このリーダーとメンバーのインタラクティブな関係である。
リーダーシップはあたかも優秀なリーダーがチームの成果を引き出すように論じられるが、実際にはこのように、メンバーシップもリーダーシップに影響を与えているし、リーダーシップがメンバーシップに影響を与えている。
私は、リーダーシップよりも、このリーダー・メンバー・シップこそがチームの成果を引き出す鍵であると考えている。

↓読みやすい本ですよ。