小山内 裕

金曜日は株式売買のタイミング?

anomaly (アノマリー)っていうんですね。

隔週で金曜日は資産運用管理の講義がある。その度に「今日の相場はよかったなー」と思いながら大学に向かっていることに気づいた。
もちろん、Dailyでの結果に一喜一憂していては超長期の運用はできない。

だが、今年の毎週金曜日の日経平均のデータを取ってみると、前日比プラスとマイナスが交互に発生していることが確認できた。今年になって概ね75%の確率でそのように動いている。
インデックスを安く売って高く売ることを基本とし、-の金曜日に買い、買値を上回った+の金曜日に売ったとすると、今年は2,271円のプラスである。1月5日の日経平均は17,091なので、約13%の利益。
1月5日から7月8日の間に、最高の条件(最安値で買い、最高値で売った場合)で1回だけ買売した場合で1,580円のプラスである。1月5日からは、約9%の利益。

信用取引が影響していることは確からしいが、理由はわからない。ちなみに、昨年はこのような傾向はなかった。
また、インデックスを買うにはベータが1のポートフォリオを作る必要があるから、それなりに資金が必要かも。

( * は、アノマリーが現れなかった日)

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株式の期待リターンとリスク

市場価値は日々刻々と変化する。けれどもどこまで上下するのだろうか。
例えば、国内株式の場合、100万円投資した場合、3分の2の確立でマイナス13万円からプラス30万円の範囲で動く。逆に3分の1の確率でこの範囲を超える。
また、長期的にはインデックスと同程度に収束していく。

もちろんこれだけでは判断できないが、これを利用すれば売買の判断の助けになる。
例えば、100万円投資して、マイナス10万円になってもまだ想定の範囲内であるから、待ってみるのも悪くないかもしれない。

統計的に、株式と債権の長期的な期待リターンとリスクは概ねこんな感じらしい。
損益は「期待リターン±標準偏差」となる。

無題
さて、資産運用における重要なことは、リスクを管理することである。リターンを管理することはできないが、リスクなら管理できる。ここでいうリスクとは標準偏差のことである。
リスクを小さくするということは、この標準偏差のブレをいかに小さくしていくかということである。
分散がその一つの方法であろう。

感情のマネジメント EQ – 1 of ?

Daniel Goleman (1995), EMOTIONAL INTELLIGENCE-Why it can matter more than IQ : . (土屋京子訳 (1996) 『EQ―こころの知能指数』 講談社。)の紹介。
私はこの本を読んで「やっぱりそうだ」と思った。そして少し安心したと同時にその課題に取り組むことの難しさを痛感した。内容が非常に濃いので、私なりのsummaryは数回に分けて書こうと思う。

IQが非常に高く、東大を卒業し、勤務先で出世し、収入も多いのに暴力事件を起こしたり、ひどい場合には殺人事件にまで至るケースがある。そういった事件を起こさなくともIQ (intelligence Quotient) が高い人が必ずしも成功せずに、平均的なIQの人が大成功するケースが多々ある。つまり、「IQが高いからといって必ず幸せになれるわけではない」のである。このことに多くの方は経験的に同意するであろう。
現代の学校教育におけるmetricはIQである。場合によっては家庭における教育の中心にもIQがあるのではないだろうか。必ずしもIQが人生の成功を導くわけではないことを知っていながら、幸せになるためにIQに頼っているのである。
さらに重大な事実は犯罪の増加傾向である。子どもの犯罪も増加している。感情を抑えきれずに、他人も自分も傷つける凶悪な犯罪である。この背景には教育に欠けているものが見え隠れしている。
社会は個人にとってのインフラである。犯罪が多発しているインフラの上で個人の成功や幸せはあり得ない。今は良くても次の瞬間犯罪に巻き込まれるかもしれない状態なのであるから。

これらの問題に対するキーワードはEQ (Emotional Quotient) である。

EQのEはEmotion(情動)である。情動という言葉はもともと行動に結びつくニュアンスを含んでいる。
情動は特定の行動パターンに結びついている。これを情動反応と呼ぶ。
動物の情動反応はすなおである。敵が襲ってきたと判断すればすぐさま攻撃態勢をとるし、目の前に現れたものが獲物であると判断すればただちに捕捉しにかかる。情動がそのまま行動に表れる。
動物の中でもヒトだけは情動がすなおに行動につながらず変則的な表れ方をする。これはヒトならではの脳の働きの違いによるものだ。しかし、情動に支配され、他の動物と同じくすなおな情動反応をおこしてしまうことがある。情動のハイジャックがおこったときだ。
情動のハイジャックは扁桃核と関係がある。扁桃核とは大脳辺縁系の底辺に左右にひとつずつあるアーモンドの形をした神経核である。

扁桃核の理解を進めるために、ヒトの脳の進化、構造、動作を説明する。(次回に続く)

市場平均を上回る利益は出せない

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チャールズ・エリス 敗者のゲーム(新版) なぜ資産運用に勝てないのか

人生設計をたて、資産運用をして将来に備えようという人は必読ではないだろうか。
私の10数年の経験を振り返ってみても大きな利益はだしていない。大きな損失を出したことがあるが、別の複数の銘柄でほぼプラスマイナス0になった。上下するチャートにあわせて売買を繰り返したこともあるが、結局そのチャートの最初と最後で1回売買した利益と同じで、証券会社を儲けさせただけだったこともある。

勝手ながら私なりの要約。
人生における資産運用は「勝者を目指すゲーム」ではなく、「敗者にならないゲーム」である。
マーケット平均以上のリターンを出すことは不可能であり、リスクを管理しながら長期運用することでマーケット平均を目指すことができる。

■ 「敗者のゲーム」とはミスをしないことである。誰かのミスが勝利を呼ぶ
マーケットに勝つとは、マーケットの平均以上のリターンを得ることである。
マーケットの多くの取引は機関投資家が占めている。マーケットは機関投資家そのものである。
機関投資家は投資のプロである。機関投資家は毎日刻々と変化するマーケットの情報をいち早く受け取り、投資先企業の経営者と定期的に面接し、いかにして投資のリターンを高められるか研究し、そのためのシステムに多大な投資を行っている。しかもほとんどの機関投資家がそうしている。
ネットワークが発達した現在は、ほとんどの機関投資家はほぼ同じ情報を持ち、ほぼ同じ投資行動を取っている。この勝負に勝つには別の機関投資家のミスにいち早く対応することである。

個人投資家がマーケットに勝つにはこれら機関投資家に勝たなければならない。が、先述の通り多大な時間と労力を費やしている機関投資家に勝つことは不可能である。
一時的に高いリターンを得たとしてもそれは偶然であって、30年、40年またはそれ以上の超長期間投資においては不可能である。実際に米国の運用機関はマーケット平均に負けている。
そもそも個人投資家は一時的な資金のために資産運用が必要なわけではないだろう。例えば老後の遠い未来のための資産運用であろう。

ではリターンを得るにはどうしたらよいか。

■ 超長期間で投資し、勝ちを取りに行かないこと。
つまり、マーケット平均を目指すことである。超長期間で運用すればマーケット平均になる。
超長期間で運用するには運用方針、目的、方法、期間を明確にし、それに従った投資行動を徹底することである。この点が本書において最も言いたいことであろう。
投資における最大の難関は頭を使うことではなく、感情をコントロールすることである。一時的に大きな含み益が出たり、含み損が出ても、動揺したり、買い急いだり、売り急いだりしないことでる。
ポートフォリオは上下しながらも超長期間においてだいたいマーケット平均に収束する。

■ 投資とはリスクをとりそのリスクを管理すること。
投資におけるリスクは次の3つ。

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株式グループ・リスクとは、例えば特定の業種に投資する時に発生する。業種が異なっても連動し合う場合も株式グループである。銘柄またはファンドを分散することで回避可能である。
つまり、いかにマーケット・リスクを管理するかが資産運用の主要なテーマとなる。
マーケット・リスクを管理するには、投資対象マーケットを分散する、超長期で運用するなどの方法がある。

■ その他
インフレの恐ろしさと、時間がもたらす複利の効果にも触れているがここでは割愛する。でもこの2つはとても重要。