お金と時間以外のコストを考える

「コストを引き下げて利益を増やす」…資本主義においては使い古され、これからも使われ続けるセンテンスであろう。
コストは単なる時間やお金の出費だけではない。コストを下げるにはどうしたらいいか、を考える前にコストとは何かを考える必要がありそうだ。

コストは発生する場所で大きく3つに分けられる。
自社で発生するコスト、取引先で発生するコスト、顧客で発生するコスト。
私の長期的目標は「地球社会に貢献する会社」の実現であるから、自社のコストさえ低ければいいとは考えない。直接的、間接的に関係する人などのコストを引き下げることも対象とする。

さて、コストといった場合、お金と時間以外にどんなものがあるだろうか。
低い信頼性、面倒くさいこと、理解しにくいこと、、、これらもコストである。

クラウゼヴィッツ『戦争論』では、不確実性の源泉を「摩擦」と呼んでいる。計画通りに物事が進まないのは、摩擦があるからだ。だから摩擦を減らすことでその確度を高める努力をする。参画者が計画を理解していることが成功の鍵だとすると、その計画がどんなに優れたものであっても理解しにくい、1つ1つのタスクが面倒で気乗りしないようなものであったとしたらどうであろう。恐らく、摩擦が多すぎて成功は困難であろう。
言い換えれば、成功をより確実なものとするためには摩擦を減らすことである。摩擦を減らすにはコストを減らす必要がある。

企業が外部のリソースを内部に取り込むのもこれで説明がつく。簡単な例では、エクセルを高度に使える人を社内に配置しておくことで、いつでも希望通りにグラフを作成することができる。しかし、そのような人がいない場合、外部に委託しなければならない。そうすると、その手配から始まり、委託業務内容の詳細を伝え、費用と時間の調整をしなければならない。摩擦だらけである。

一方、顧客で発生するコストとは、ユーザビリティの低い製品を使うこと、予約が必要でその手間がかかるサービスを利用する、信頼性の低い情報システムを使うことなどである。得られるベネフィットと比較してコストが大きい場合、言うまでもなく顧客はコストを嫌い離れていく。

このように考えると、コスト削減のアプローチが変わってこないだろうか。つまり、使うお金を減らすことではなく、利便性や信頼性の改善と捉えることができる。そしてそれは同時に付加価値を高め、売上げを増加させる。