ある時、突然、考えもしなかった事態に遭遇することがある。そんな時は自分のコンテクストで対処することがよいのではないだろうか。
コンテクストとは文脈と訳されるが、この場合は自らの得意なテーマ、信ずる考え、理念などと置き換えてもいいかもしれない。
中国の上海での悪質なタクシー運転手の話し。
タクシーに携帯電話を置き忘れてしまった。気づいてすぐに自分の携帯電話に電話した。2回かけても誰も応答しなかったが3回目にタクシーの運転手が電話に出た。
中国人の同僚に電話を代わり、今いる場所を伝えて持ってきてもらうように話してもらった。運転手は少し離れた場所にいるから後で来るというので、その同僚の電話番号を伝え、近くに来たら電話をしてくれと頼んだ。
中国のタクシーのレシートにはドライバーのID番号と車のナンバーが印字されている。その同僚によると、それを受け取っていたので万が一も大丈夫だろう、とのこと。さらに電話に出て持ってきてくれるというのだから良いドライバーだという。
別のマレーシアから来ていた同僚も同様にタクシーにデジタルカメラを忘れてしまいすぐに問い合わせたが、ドライバーが「そんなものはない」と言って、恐らくくすねたそうだ。
さて、その後1時間待っても連絡が来ない。何度電話しても応答がない。さらに1時間後に連絡が取れ、ドライバーが電話を持って来てくれた。
多少お礼もすべきだろうと、40元を用意していた。タクシーの初乗りは11元だからそれを2倍して、往復分でさらに2倍した分が適当かな、と思っていた。物価などを考慮すると日本では2500円といったところだ。
そのドライバーは携帯電話を渡す様子がまったくなく、同僚の中国人と何やら中国語で話している。中国語はわからないので一段落するのをそばで待っていた。すると300元を要求しており、お金を渡さない限り返さないそうだ。もちろん、ここまで来ると法外な要求だ。
私にとっては非常に重要な電話であった。これがないと出張中の中国でコンタクトを取ることが難しくなってしまう。特に家から私への連絡手段がなくなってしまう。日本に帰ってから始末書も書かなければならないだろう。それに娘の写真も入っている。もし、ドライバーに逃げられたら警察に届けるつもりでいたが、出張中の貴重な時間をこのために失うのは避けたかった。警察に届けたところですんなり解決できるとも思えなかった。
そんなこんなで100元にしろと言い続け何とか携帯電話を奪い返した。
まったくいい気分ではなかった。
後で、もっと私のコンテクストでドライバーと接すれば良かったかもしれない、と思った。言葉の壁があったからどれほど出来たか不明だが、自分の勉強のためにもトライしてみても良かったかもしれない。
私のコンテクストはリレーションシップ デザインである。どうして300元なのか理由を聞くとか、そもそもはじめにコンタクトを取ったときにメーターを回して来てくれるように言うとかすればもう少し気持ちよく解決できたかもしれない。
それにしても中国はまだまだ驚かされることがたくさんある。日本にいるのと同じ感覚でいると本当にひどい目に会う。