WEBエンジニアの誤解「スキルを高めれば収入が上がる」

「良いものが売れるとは限らない」—よく言われることである。
90年代のバブル崩壊後、メイド イン ジャパンは技術力も品質も高いのに売れない、売り方が下手だとよく言われた。
それは、コンテンツばかりをアピールして、コンテクストを創り出し伝える力が弱いことが原因とされた。

たとえば、キーコーヒーはコーヒーを売っているが、スターバックスが売っているのはコーヒーではない。

スタバが売っているのは家、職場に次ぐ「第3の場所」である。またはそこから派生するくつろぎや豊かさである。
だからスタバではコーヒーを必死に売り込んでいるパートナー(スタバで働く人すべてをパートナーと呼ぶ)はいない。
コーヒーについての知識やドリップの技術はあって当たり前であり、客様にリッチな時間を提供することが評価されるのである。

WEBエンジニアも同じである。
スキルを高め、経験を積めば自動的に年収が上がる、ということはない。
エンジニアなんだからスキルがあって当たり前。所属する組織が求めていることを成し遂げて初めて評価の対象となる。
つまり、組織が売っているものを理解せずして高い評価と収入は得られないのである。

組織が売っているものは、必ずしも誰もがわかる形になっているとは限らない。
日々変化する事業環境の中で創り出され、徐々に変化していく場合もある。
周囲をよく観察し、トップの言葉に耳を傾け、自分なりの感性で理解し、そして売ったという実績が評価につながる。

ところで、ブックルックチームが売っているのは「ITサービス」である。
ITとは言うまでもないが、Information Technology=情報技術である。コンピュータやプログラムの技術ではない。
ITとは情報に意味づけする技術であり、コンピュータやプログラムはそのためのツールである。
仕様書通りにシステム開発をするだけでは高い評価につながらない。
ユーザーの事業や要求を深く理解し、仕様を作り、形にできる人を最も高く評価している。

最後に、技術(サイエンス)は時間とともに陳腐化する性質を持っている。
誰もが真似でき、代替する別の技術がどんどん生まれてくるからである。
一方、アートはオンリー ワンである。
サイエンスだけでなく、アートをどれほど織り込めるかがまた評価を大きく左右する。