ホワイトカラーとは違うナレッジワーカー

ナレッジワーカーが注目されつつある。ナレッジワーカーはホワイトカラーとは違う。
これまでは、労働者をホワイトカラーとブルーカラーに分けていたが、さらにナレッジワーカーが加わり3タイプに分けられる。
ナレッジワーカーは日本語で知識労働者。ナレッジワーカーはただ知識を持っているだけではなく、知の編集能力を持った労働者のことだ。一方デスクワークをするだけの労働者はホワイトカラーだ。

例えば、最近のテレビや雑誌はプロデュースしているだけで、自社でコンテンツを作ることはほとんどないそうだ。コンテンツの作成はアウトソースしている。プロデュースは正に知の編集である。
自分たちは例えば「最近投資ブームだから、それを題材にした番組を作ろう。冒頭ではデイトレーダーで儲けた人と損した人を紹介して視聴者をひきつけ、それぞれ何が原因でそうなったのかインタビューした内容を放送し、中盤ではネット取引を持ち出し、最後に今後の景気予測や格差社会を展開して、皆が投資をしなければならないと思わせるようにしよう。」といった構成を考え、インタビューが必要ならそれをアウトソースしている会社に依頼し、ネット取引の実態については別のアウトソーサーに取材させ、格差社会についてはどこそこの大学教授のインタビューをこれまた別のアウトソーサーに依頼する、といった感じだ。

ナレッジワークはどの会社でも必要だ。みんなこのような経験はないだろうか。
会社で同僚が顧客と電話で話している。何か問題を抱えているようだ。後でその同僚と話をしてみると、以前自分も経験したことがある問題だった。解決策をそれぞれ出し合っていくうちにいいアイデアが生まれる。それを実戦してみたらうまくいった。そこで、その問題と解決策を他の同僚にも話してみる。するとそれは徐々に広まり皆同じように行動し、問題は問題ではなくなった。
これはナレッジワークの1例である。これはSECIモデルになるのだが、問題を感知し、話し合うことで明るみに出す。そこから実効性のあるアイデアをドキュメント化してまとめ、他の人にも広げる。
ホワイトカラーは明るみに出てドキュメント化されたものを読み正確に実行するだけだ。

ナレッジワーカーもホワイトカラーも最終的には同じ仕事をするかもしれないが、そこにいたるプロセスは大きく異なる。
会社にとって重要な人材は、価値創造ができ、代替性が低く、模倣困難性の高い人だ。マニュアルを読んで実行するだけでよければ簡単に入れ替えができる。しかし、効果あるマニュアルを作成できる人は簡単には入れ替えができない。

ナレッジワークは資本(お金)を必要とせずにお金を稼ぐのだ。
既に、ほとんどの企業の、株式の発行数x株価による価値は、その企業が所有する資産よりも多い。それは無形資産が含まれていることを意味する。
そして労働市場においても価値があるから、ホワイトカラーよりもナレッジワーカーの方が給料もよくなる。

SECIモデルについては、野中郁次郎・紺野登『知識経営のすすめ―ナレッジマネジメントとその時代』ちくま新書、野中郁次郎・竹内 弘高・梅本 勝博『知識創造企業』東洋経済 がお勧めです。