損切りと利益確定

あれは城山三郎の作品だったと思う。

ある投資家の話。
ある年の暮れ、投資はめちゃくちゃマイナス、先物で買い取った小豆の山、という状況でとても不機嫌だった。

しかし、年が明けると、それまでの不機嫌が嘘のように機嫌が良い。

なぜかと聞くと、「これまでのマイナスがゼロになったから」という。

ただし、何か別の投資で稼いだというわけではない。
マイナスだった成績は、昨年のこと。昨年1年間の帳簿は締め、また新たな年が始まったからゼロからのスタートというわけだ。

年の初めは、サンクしてしまったことは置いておいて、心新たに投資を始めるのである。
まもなくやってくる1年の終わりと始まり。

まさに、これと似ている。

人生は生まれて死ぬまでが一区切りだが、途中を1年間、半年、3ヶ月、と勝手に区切りをつけているからやっていけるようなものである。

年が明けたら、前年の損は忘れ、当年はプラスを目指す。

年が明けたら、前年の得は確定して、また当年のプラスを目指す。
前年のマイナスを当年で取り返そうとするよりも、プラスを作り上げるようとする方が楽しい。

と私は思う。