右脳アプローチのマーケティング

伝統的なマーケティングでは、機能面に力点を置いて差異化を進めてきた。
しかし、コモディティ化が進む市場では機能面で差異化を図っても、長期的にその地位をキープすることは非常に難しい。そこで、快楽面が注目されてきているという。

機能面は定量的に示すことが出来る。いわば左脳へのアプローチである。理論的に検討すればその優れているところは一目瞭然である。
快楽面は定性的に示すことになる。これは右脳へのアプローチである。理論的には表現しづらいし、人によってその評価も分かれるだろう。

ラビンドラ・チチェリー米リーハイ大学助教授らの実験によると、機能面での期待に応えられないと「不満」にとどまらず「怒り」が生じ、一定水準を超える機能であれば「安心や信頼」が生じたという。
快楽面での期待に応えられない場合は「不満」にとどまり「怒り」には至らない。しかし、期待を超えたベネフィットがあると「安心や信頼」よりも「喜び」に結びつく。
そしてこの喜びを得た人はクチコミを誘発され、強い再購買意欲も抱く。

これは、コロンビア大学のトリー・ヒギンス教授の制御焦点理論で説明できる。
人々は不快を回避し快に接近しようとするが、不快回避と快接近とでは異なる目標設定を持つため、その後の感情に違いが生じるという。
不快回避では防衛が、快接近は好ましい状態が目標である。
よって、機能的ベネフィットの達成は「安心や信頼」をもたらし、感情的ベネフィットの達成は「喜びや興奮」をもたらしているのである。
(参考)恩蔵直人, 日本経済新聞2009年2月27日朝刊『「非差異化」時代のマーケティング』「快楽」で差異化 第6回