評価システムを考える (成果主義)

昨日は野田稔先生のHuman Resources Managementに出席した。話題は成果主義について。学部のときの私の卒論のテーマは能力主義だっただけにこの辺の話には敏感だ。

それにしても野田先生は情熱的でinspireされるものがある。ご自身の考えを持ってはいるがそれを押し付けようというところはなく、柔軟さが伺える。それは聞いている方が論理的な自分の考えを持たなければならない状況に追いやられる。さもないとついつい聞き流してしまうだけになってしまうことになる。

さて、課題は成果主義の定義をせよ、というもの。高橋伸夫 『虚妄の成果主義』での定義はあるものの、他にはなさそうだ。そこで自分なりに定義するとどうなるか。
成果主義の定義は、事業の目的達成に対する貢献度とその過程を評価することである。
成果主義の目的は個人または組織にその活動の結果(貢献度)をフィードバックすることで、反省と次の貢献につながる行動を促すことである。
成果は事業活動によってもたらされる結果であり、成果を出すことが事業の目的ではない。同様に組織で働く人々の結果として成果が出たり出なかったりするが、成果を出すことが目的ではない。P.F.ドラッカーによれば顧客創造が事業の目的であり、利益としての成果は事業活動の妥当性を判定する基準に過ぎない。
事業活動の結果だけでなく、結果が出るまでの過程は、その組織の理念や方針に沿ったものでなければならない。理念や方針は組織の存在意義を示すものである。存在意義の体現は顧客へのメッセージでもある。理念に反する行動は、事業体が本来意図しているものとは異なるメッセージを顧客に与え、自ら存在意義の否定につながりかねない。
評価方法は経営理念(または方針)、組織文化、事業特性を考慮して決定されるべきである。例えば、個人間に大きな差をつけるのかつけないのか。チャレンジングな目標設定を受け入れる組織文化なのか。変化の激しい事業なのか。安定した事業なのか。例えば、個人のスキルへの依存度が高く、変化の激しい事業で、労働流動性が高いが非常にチャレンジングなことを好む従業員が多い場合、目標管理制度(MBO)が効果的であろう。個人目標は常にストレッチゴールを設定することが自己表現であり、目標も3ヶ月に1回見直しても問題ない。
評価対象は個人と組織で分ける方法もある。個人の貢献度と事業の目的達成度が必ずしも一致しない場合もあるから、最終的な評価結果は個人評価x組織の成果となる。
人が人を評価する以上、正確性を追及することは不可能だ。むしろ納得性を高めることを追及すべきであろう。それには、評価する人とされる人との定期的なコミュニケーションとフィードバックは必要だ。どこを評価してどこを改善すればよいのか、また手本になるような人は誰かを具体的に知らせる。評価に透明性を持たせようとすることは、評価する方が正確な評価をせざるを得ないことを意味する。